非上場企業の株価算定・自社株評価の方法を全網羅——法人税法上の時価・類似業種比準方式・DCF法・ブラックショールズ法を公認会計士が比較解説

自社株、いくらで評価する? アイキャッチ画像

「親族から自社株を買い取りたいが、いくらで買えばいいのか?」

「M&Aや事業承継を控えているが、うちの会社の価値はいくらなのか?」

非上場企業には、上場企業のように毎日変動する「市場の株価」がありません。そのため、自社株の評価(株価算定)を行う必要がありますが、ここで多くの経営者が混乱します。

なぜなら、「誰から誰へ、何の目的で株式を移動させるか」によって、適法とされる『時価』の計算方法が全く異なるからです。

この記事では、四大監査法人出身の公認会計士・税理士が、税務上の評価手法(配当還元方式など)から、M&Aやファイナンスで用いられるバリュエーション手法(DCF法・ブラックショールズ等)まで、代表的な評価手法を網羅的に解説します。

目次

1. 【税務上の評価】財産評価基本通達によるアプローチ

親族間や、同族会社と個人の間で株式を売買する際、国税庁の定める「財産評価基本通達」に則った時価(個人と法人の間の取引では、所得税基本通達59-6・法人税基本通達9-1-14による調整を加えた価額)で取引を行わないと、贈与税やみなし譲渡所得課税(所得税法59条)の対象となります。

原則的評価方式(類似業種比準価額法・純資産価額法)

会社を支配している同族株主の間で株式を異動させる場合は、会社の規模(大・中・小)に応じて、以下の方式を単独または併用して評価します。

  • 類似業種比準価額法:事業内容が似ている上場企業の株価を基準に、自社の「1株当たりの配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3要素を比較して計算します。一般的に株価が低く算出されやすいのが特徴です。
  • 純資産価額法:会社の貸借対照表にある資産と負債を、課税時期における「時価」で評価し直し、資産から負債を引いた純資産額(解散価値)をベースに計算します。含み益に対する法人税額等相当額(37%)の控除が認められます。

【株主整理の要】特例である「配当還元方式」

経営支配権を持たない「同族株主以外の株主(少数株主)」等から株式を取得する場合、原則として配当還元方式という特例が認められます。

過去の配当金額をベースに10%の利率で還元して株価を計算するため、原則的評価方式と比べて株価が極めて低く(額面程度に)算出されます。 退任した役員や、経営に関与していない親族から会社が自社株を買い取る(自己株式の取得)際に、買取価格の根拠として使われる手法です。ただし、売主が「同族株主以外」に当たるかは譲渡直前の議決権割合で判定し(所得税基本通達59-6)、会社が著しく低い価額で取得すると残った株主に対するみなし贈与(相続税法9条、相続税基本通達9-2)が問題になります。配当還元方式を使えば税務リスクがなくなるわけではありません。

▶ 自己株式を取得する際の「会社法の厳格な手続きや財源規制」については、以下の記事で解説しています。

2. 【M&A・組織再編】ビジネスにおけるバリュエーション手法

第三者とのM&Aや、ファンドからの出資受け入れ、あるいは裁判所で「公正な価格」が争われるような場面では、税務通達に縛られず、企業の将来性や収益力を反映したファイナンス理論に基づく評価が行われます。

評価手法概要と計算のベースメリット・実務での使われ方
年買法(時価純資産+営業権)時価純資産 + (実質営業利益 × 1~5年分)直感的でわかりやすく、中小企業のM&Aにおける当事者間の価格交渉の目安として最もよく使われる簡便法です。
マルチプル法(類似会社比較法)EBITDA等の指標 × 類似上場会社の倍率(EV/EBITDA倍率など)市場の評価水準を反映でき、DCF法の検証にも使われます。類似会社の選定で結果が大きく変わります。
DCF法将来生み出すと予測されるフリーキャッシュフローを、一定の割引率(WACC等)で現在価値に割り引く将来の収益力を最も論理的に反映可能。M&Aや裁判等で「公正な価格」を算定する際の標準的手法です。

3. 【高度な算定】複雑なオプション評価モデル

ベンチャー企業が発行する種類株式(優先株式)や、新株予約権(ストックオプション)、業績連動型のM&A(アーンアウト条項)などの複雑な権利関係を評価する場合、高度な金融工学のアプローチが求められます。

  • ブラック・ショールズ・モデル:株価の変動率(ボラティリティ)や無リスク利子率などの変数を用いて、オプションの理論的な価値を算出する方程式です。ストック・オプションの会計処理(公正な評価単価の算定)で標準的に利用されています。
  • モンテカルロシミュレーション:将来の株価や業績の動きに対して乱数を発生させ、何万通りものシナリオをシミュレーションして適正価値を統計的に導き出す手法です。ブラック・ショールズでは計算しきれない複雑な条件がある場合に活用されます。

まとめ:目的に合わせた「時価」の使い分けを

自社株評価において最も留意すべきは、「税務上の時価」と「M&Aや会社法上の公正な価格」は全く異なるという点です。

当グループでは、Big4監査法人出身の公認会計士・税理士が、M&Aや会社法上の価格決定で用いるバリュエーション(DCF法・マルチプル法・モンテカルロシミュレーション等)と、税務上の時価(財産評価基本通達・所得税基本通達59-6)に沿った株価算定の両方をお受けしています。税務上の取扱いに関するご相談は、当グループの会計事務所が面談のうえでお受けします。

「自社の株価は今いくらなのか?」

少しでも疑問や不安がある場合は、自己流で進める前に必ず専門家にご相談ください。


よくあるご質問(FAQ)

少数株主(元役員など)から「DCF法で計算した高い株価」での買い取りを強く要求されています。応じなければいけませんか?

必ずしも応じる必要はありません。少数株主からの買い取りにおいて、将来の収益を高く見積もったDCF法が常に適正とは限りません。評価方法は取引の目的と株主の立場で異なり、支配権のない少数株式については配当還元方式や複数の方式の併用が採られる例もあります。相手方の言い値で合意する前に、第三者機関による客観的な株価算定書を取得し、交渉の根拠とすることをお勧めします。

株価算定書の作成を依頼した場合、費用と期間はどのくらいかかりますか?

目的によりますが、最短2週間〜、費用は数十万円〜が目安です。税務目的のシンプルな算定(財産評価基本通達に基づく評価)であれば比較的短期間・低コストでご提供可能です。一方、M&Aや裁判の証拠としてのDCF法やモンテカルロシミュレーションを用いた複雑なレポートの場合は、1ヶ月以上の期間と相応の費用を要します。お見積りは目的・資料の状況を面談で確認したうえでお出しします。

まず、自社の株価の桁を自分で確かめる。相談はそのあとで足ります。

FREE TOOL

自社の株価の桁を、相談の前に自分で確かめる

業績の数字を入れると、株式価値の概算レンジが出ます。算定書の代わりではなく、どの評価手法で幾ら変わるかを先に見るための道具です。

正式な株価算定書(税務目的・M&A・少数株主対応)は面談のうえ個別にお見積りします。

この記事を書いた人

Big4監査法人出身の公認会計士・税理士 複数名で構成するプロフェッショナルファームです。
株式会社MiChiは情報商品(規程・計算ツール・マニュアル)の提供と記事・無料ツールの運営を行い、税務顧問(書面添付を前提)・申告・税務相談は当グループの会計事務所(税理士事務所)が面談のうえでお受けします。
IPO・TPM支援、経理決算体制構築、内部統制構築、会計監査、財務DD、株価算定、組織再編スキーム、学校法人会計支援は、対応業務・実績領域ページをご覧ください。

目次