【2025年度決算】新学校法人会計基準で実務対応が必要になった論点|基本金明細書と財産目録を公認会計士が解説

新学校法人会計基準 実務対応のポイント アイキャッチ画像

令和7年度(2025年度)決算から、私立学校法の改正にあわせて学校法人会計基準が改正され、新基準(改正後の昭和46年文部省令第18号)に基づく計算書類の作成が始まりました。当グループでは、適用開始前の実務セミナー(勉強会)の開催から決算対応までを年間プロジェクトとして支援しており、その過程で実際に対応が必要になった論点を整理します。

今回の改正は、令和6年9月30日公布の「学校法人会計基準の一部を改正する省令」(令和6年文部科学省令第28号)と、これを受けて令和7年3月27日付けで発出された文部科学省通知「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について」(6高私参第27号)が基本の拠り所になります。実務対応が必要になった3つの論点と、あわせてよく誤解される1点を解説します。

目次

1. 基本金明細書:名称変更と様式の組み替え

附属明細書のひとつである「基本金明細表」は、新基準(第42条第1項第3号・第7号様式)で「基本金明細書」に名称が変更されました。呼称だけの変更ではなく、記載内容にも実質的な変更が加えられています。

  • 各号基本金について「当期組入対象額」と「当期取崩対象額」の行が新たに設けられ、両者の差引で「当期組入額(又は当期取崩額)」を算定・記載する構成になりました。
  • 第1号基本金の当期組入対象額・当期取崩対象額は、「土地」「建物」「構築物」など、貸借対照表の小科目単位での記載が求められます。

実務上は、会計システムやサブシステム側の集計ロジックを新様式にあわせて組み直す作業が必要になります。当グループが支援した移行対応でも、通知別添3「基本金明細書の記載例」に沿って集計方法を再構築し、監査法人によるレビューを重ねて最終化するプロセスを踏みました。

2. 財産目録が担う役割の変化と登記実務

基本財産・運用財産の区分と記載の詳細化
新基準では、財産目録の資産額のうち基本財産と運用財産の区分について、改正私立学校法第17条第1項の規定および寄附行為等を踏まえて各学校法人が決定することとされています。また、ステークホルダーへの情報開示を主な目的とする新基準の趣旨から、財産目録には貸借対照表に記載する科目より詳細な内容を記載することが望ましいとされました。従来は貸借対照表の内訳明細としての位置づけが強かった財産目録が、独立した情報開示資料としての性格を強めたといえます。

資産の総額の変更登記との関係
学校法人は毎事業年度、資産の総額(資産の部合計から負債の部合計を差し引いた正味財産額)について法務局への変更登記が必要です。この変更登記の添付書類は、原則として財産目録の写し(原本証明付き)ですが、資産の総額が判明する貸借対照表でも差し支えないとされています。財産目録の記載内容が詳細化される一方、登記に必要なのはあくまで正味財産額という1つの数値です。財産目録の様式変更にあわせて登記実務まで見直す必要はありませんが、両者の紐付けを都度確認する体制は維持しておく必要があります。

3. 引当金:見積りの合理性が新たに問われる領域

新基準第11条第2項関係では、引当金の計上について明文の規定が新たに設けられました。従来から計上されてきた退職給与引当金に加え、将来の特定の事業活動支出について、当該会計年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ金額を合理的に見積もることができる場合には、当該会計年度の負担に属する金額を事業活動支出として引当金に繰り入れ、負債性のある引当金の残高を貸借対照表の負債の部に計上することが明確化されています。

賞与引当金や徴収不能引当金など、これまで法人によって計上の有無や水準にばらつきがあった引当金についても、明文規定を踏まえた計上と、見積りの算定根拠の文書化が求められます。令和7年度の期首時点で既に発生している引当金を当年度の貸借対照表に計上する場合、事業活動収支計算書の「特別収支」の「その他の特別支出」に「(何)引当金特別繰入額」などの小科目を設けて処理できることも通知で示されています。

4. リース会計は変わっていない:混同されやすい「オンバランス化」情報

今回の改正に関連して、新基準でリース取引がオンバランス化(資産・負債として貸借対照表に計上)されるという情報を見聞きすることがあります。しかし、令和7年3月27日付け通知(6高私参第27号)の注記事項記載例を確認する限り、学校法人会計基準におけるリース取引の会計処理そのものに変更はありません。所有権移転外ファイナンス・リース取引について、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(オフバランス処理)を行っている場合、重要性が認められるときに注記対応が必要になる点は従前と同様です。

混同の背景には、企業会計基準委員会(ASBJ)が策定した一般企業向けの新しいリース会計基準(2027年4月以後開始する事業年度からの適用が予定されているもの)の存在があると考えられます。こちらはオペレーティングリースを含めた原則オンバランス化が特徴ですが、学校法人会計基準とは別の基準です。学校法人の経理担当者は、この2つの改正を区別して理解しておく必要があります。

新基準への移行を、年間プロジェクトとして支援しています

当グループでは、新基準の適用開始前に実務セミナー(勉強会)を開催し、制度改正の全体像を共有したうえで、基本金明細書・財産目録・引当金の各論点への実務対応から決算・所轄庁への提出までを年間プロジェクトとして支援した実務経験があります。今回の改正は会計基準の変更だけでなく、私立学校法改正によるガバナンス改革(理事会・評議員会の機能強化等)にも及ぶため、経理担当者だけでなく理事・監事を含めた関係者への説明機会を設けることが、初年度決算を計画どおりに進めるうえで有効です。

新学校法人会計基準への対応や会計監査についてご相談がある学校法人・法人関係者の方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。対応業務の詳細は対応業務・実績領域のページにも掲載しています。

本記事は、令和6年文部科学省令第28号による改正後の学校法人会計基準および令和7年3月27日付け文部科学省通知(6高私参第27号)等の公表資料に基づき、一般的な留意点を整理したものです。個別の学校法人における会計処理・登記手続きの判断については、所轄庁・監査人・司法書士等の専門家にご確認ください。

この記事を書いた人

四大監査法人(Big4)および税理士法人出身の公認会計士・税理士で構成される株式会社です。
公認会計士としての「保証業務」の品質を税務に応用し、税法・会社法・金融商品取引法や判例に基づく強固な「法的理論武装」と「書面添付制度」を駆使して、KSK2等のAI税務調査から企業を徹底防衛します。
また、M&Aの財務DD、株価算定、事業承継、組織再編スキームの構築など、企業価値を最大化する攻めの財務戦略をワンストップで提供します。

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