【実録事例】税理士に任せていたのに土地が減価償却されていた——事業承継直前に発覚した固定資産の誤りと追徴リスク

「税理士に申告を任せているから、うちは大丈夫」——多くの経営者様がそう考えていらっしゃいます。しかし、顧問契約を結んでいることと、その内容が正しく検証されていることは、まったく別の問題です。

本稿では、不動産賃貸管理業を営むA社様(代表者様ご一家による家族経営、事業承継を控えていた状況)で実際に発覚した、固定資産計上の重大な誤りについてご紹介します。ご本人様の同意のもと、会社名・個人名は伏せ、金額も概算の桁感のみを残す形で記述しています。

目次

「有資格者と一度も話したことがない」という状態

A社様は、事業承継のタイミングを見据え、決算書・申告書・過去の不動産売買契約書を一式確認したいというご相談から始まりました。話をお伺いすると、前任の税理士事務所とは、契約から長年にわたり、税理士本人と直接話す機会がほとんどなく、主に事務員の方とのやり取りが中心だったとのことでした。

これ自体は珍しいことではありません。多くの税理士事務所では、日常的な入力作業や連絡を担当スタッフが行い、税理士本人は決算・申告の要所でのみ関与する体制を取っています。問題は、その体制のもとで、原始資料(契約書等)まで遡った検証が行われていたかどうかです。

決算書ではなく、契約書を見て気づいた誤り

決算書や申告書の数字だけを見ている限り、この誤りに気づくことはできませんでした。実際に不動産売買契約書と固定資産台帳を突き合わせたところ、次の事実が判明しました。

  • 土地と建物が合算され、「建物」として一体で固定資産計上されていた
  • その結果、本来は減価償却の対象とならない土地の取得価額まで、建物の耐用年数にあわせて減価償却されていた

法人税法上、減価償却の対象となる資産(減価償却資産)は法人税法施行令第13条に限定列挙されており、土地はここに含まれません。土地は時の経過によって価値が減少する資産ではないため、非減価償却資産として扱われるのが原則です。

不動産を一括で取得した場合、契約書に土地と建物の内訳が明記されていなければ、消費税の課税・非課税区分や固定資産税評価額等の合理的な基準で按分し、土地と建物をそれぞれ別の資産として管理する必要があります。今回のケースでは、この按分と区分がなされないまま、一体の「建物」として何年にもわたり減価償却が続けられていました。

前任者に確認しても「間違っていない」の一点張り

この点についてご本人様が前任の税理士事務所に確認されたところ、「土地を償却しているのではなく、建物として計上しているだけなので間違っていない」という回答だったそうです。たしかに、勘定科目上は「建物」としてのみ計上されており、「土地」という科目自体は帳簿上どこにも存在しません。文言としては嘘ではありませんが、実質的には非減価償却資産である土地の取得価額まで損金算入され続けていたことになります。

会計処理は、勘定科目の名称ではなく、その資産の実態で判断する必要があります。今回のケースは、まさにこの原則が見過ごされた典型例といえます。

事業承継の直前に発覚していたら、何が起きていたか

A社様は、この不動産管理事業をご子息様へ承継する予定でした。もしこの誤りに気づかないまま承継が完了し、その後の税務調査で発覚していた場合、次のような事態が想定されます。

  • 過大に計上されていた減価償却費が否認され、複数年度にわたる修正申告が必要になる
  • 追徴本税に加え、延滞税・加算税が発生する
  • 承継したばかりのご子息様が、事業の立ち上がりのタイミングで、想定していなかった納税資金の確保に迫られる

今回のケースでは、影響額は数百万円から1,000万円規模になり得る水準でした。事業承継は経営者様にとって一世一代の意思決定です。その直後に、前の代から積み残された誤りの精算に追われるというのは、後継者にとって大きな負担になります。

整備した内容:正しい固定資産管理と、自主申告できる体制

今回のご支援では、まず土地と建物の取得価額を合理的な基準で再按分し、固定資産台帳を是正しました。そのうえで、今後同様の誤りが繰り返されないよう、クラウド会計を導入し、ご本人様ご自身で日々の記帳から申告まで完結できる体制を整備しました。

顧問税理士に「任せきり」にするのではなく、ご自身でも数字の意味を理解し、必要であれば外部の専門家に検証してもらえる状態を保っておくこと。これが、今回の事例からいえる最大の教訓です。

決算書の数字だけでなく、その根拠となる原始資料まで確認する

顧問料の多寡や、税理士との関係の長さは、処理の正しさを保証するものではありません。特に不動産を保有する法人・個人事業の場合、取得時の契約書まで遡って固定資産の区分を確認することは、決算書の数字だけを追っていては決して見えてこない領域です。

株式会社MiChiでは、四大監査法人での法定監査・内部統制構築の経験を活かし、決算書の背後にある契約書・登記情報等の原始資料まで踏み込んだ確認を行っています。特に事業承継やM&Aを控えている場合、承継後に想定外の追徴課税が発生しないよう、事前の精査には大きな意味があります。

この記事を書いた人

四大監査法人(Big4)および税理士法人出身の公認会計士・税理士で構成される株式会社です。
公認会計士としての「保証業務」の品質を税務に応用し、税法・会社法・金融商品取引法や判例に基づく強固な「法的理論武装」と「書面添付制度」を駆使して、KSK2等のAI税務調査から企業を徹底防衛します。
また、M&Aの財務DD、株価算定、事業承継、組織再編スキームの構築など、企業価値を最大化する攻めの財務戦略をワンストップで提供します。

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