国税庁は2026年(令和8年)9月24日に国税システムを更改します。一般に「KSK2」と呼ばれている次世代の国税総合管理システムへの切り替えです。この記事では、国税庁とe-Taxが公表している確定事項だけを先に整理し、そのうえで「変わらないこと」「変わる方向にあること」を分けて説明します。9月の申告・納付が控えている会社は、最後の準備リストから確認してください。
執筆: Big4監査法人出身の公認会計士・税理士(株式会社MiChi)。この記事の事実関係は国税庁「国税システムの更改について」、e-Taxのお知らせ(2026年4月22日付)、国税庁「税務行政の将来像2023」に基づきます。
9月24日に確定していること(国税庁公表)
「AIで税務調査が変わる」という話題が先行していますが、国税庁が公表している9月24日の変更点は、次のとおり事務手続に関するものです。
| 項目 | 9月24日以降 | 経営者への影響 |
|---|---|---|
| 整理番号 | 納付書・所得税徴収高計算書の「整理番号」欄(8桁)が「お問い合わせ番号」欄(13桁)に変わる。税務署からの通知にもこの番号が印字される | 税務署への問い合わせ・納付書の記載で使う番号が変わる。給与ソフトの納付書印字設定の更新が必要 |
| 納付書の様式 | 納付書・所得税徴収高計算書の様式が新しくなる。現行の複写式(整理番号欄あり)は令和10年9月頃まで使用できる | 手元の旧納付書は2年程度は使える。慌てて廃棄しない |
| 申告書の様式 | 一部の書面申告書・申請届出書・法定調書の様式が新しくなる。申告書の「控用」がなくなり、配色は原則白黒に | 書面提出の会社は、過去に入手した用紙をそのまま使わない。受付開始後は最新様式で提出する |
| 処分通知の電子交付 | 電子交付の対象が拡大し、同意方法が「申請の都度」から「事前の一括同意」に変わる(手続は9月24日以降) | 通知を電子で受け取りたい会社は、9月24日以降にe-Taxで一括同意の手続をする |
| e-Taxの接続 | IPアドレスが固定から動的に変わる。IPアドレスで接続している場合は9月24日以降URL接続へ | 一般的なひとり社長には影響なし。社内ネットワークでIP制限をかけている会社は要確認 |
| 文字の取扱い | JIS第1〜4水準の文字を使用。開示する申告書等のヘッダーに提出年月日を印字 | 申告書提出時は引き続き旧字体の使用可。実務上の影響は小さい |
出典: 国税庁「国税システムの更改について」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/system.htm)
e-Taxが止まる期間と、7月決算法人の申告期限
更改に伴い、e-Taxは次の期間利用できません(e-Tax 2026年4月22日付お知らせ)。
- 2026年9月19日(土)0:00 から 9月24日(木)8:30 まで
- 2026年9月26日(土)0:00 から 24:00 まで
影響が最も大きいのは7月決算法人です。法人税・消費税の申告期限は9月30日(水)ですが、e-Taxで送信できる日は実質的に9月24日(木)8:30以降、25日(金)、28日(月)から30日(水)に限られます。停止期間の直前に送信すると、エラーが出た場合のやり直しができません。当ファームは9月18日(金)までに送信を終えることを推奨します。
毎月納付の源泉所得税(8月分)は納期限が9月10日(木)のため停止期間の影響を受けません。ただし、ダイレクト納付や振替納税の手続はe-Tax停止中には行えないため、9月下旬に納付を予定している場合は前倒しで手続してください。
変わらないこと
システムが変わっても、次の3点は変わりません。ここを押さえておくと、過度に不安をあおる情報に振り回されずに済みます。
- 税法と通達は変わりません。9月24日は法改正日ではなく、システムの更改日です。損金算入の要件も、役員給与や社宅・出張旅費の取扱いも、これまでどおりです。
- 税務調査は人が行います。調査には事前通知(国税通則法74条の9)があり、質問検査は調査官が行います(同法74条の2)。AIが自動的に追徴課税を決定する仕組みではありません。
- 申告期限・納期限は変わりません。e-Taxの停止期間があっても期限は延びません。だからこそ前倒しが必要です。
変わる方向にあること(当ファームの見解)
国税庁は「税務行政の将来像2023」で、AIとデータ分析の活用について次のように書いています。
収集した様々なデータを、BAツール・プログラミング言語を用いて統計分析・機械学習等の手法により分析することで、申告漏れの可能性が高い納税者等を判定し、その分析結果を活用することで、効率的な調査・行政指導を実施し、調査必要度の高い納税者には深度ある調査を行う取組を進めています。
国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション 税務行政の将来像2023」21ページ
同じ資料の38ページには、令和8年度にメインフレームのKSKシステムからオープンシステムの次世代システムへ移行し、調査先等からも送信・参照できる構成にする図が載っています。つまり9月24日の更改は、この分析基盤の土台が入れ替わる日です。分析そのものは以前から行われており、当ファームは次の変化が段階的に進むと考えます。
- 法人税・消費税・源泉所得税・法定調書の数字が同じ基盤で照合される。例えば、役員報酬の損金算入額と源泉徴収の給与額、法定調書の支払額が一致しているかは、機械的に確認しやすくなる
- 同業・同規模との比較で「突出した勘定科目」がある会社が、調査先の選定で目立ちやすくなる
- その結果、調査で問われるのは数字が合っているかどうかより、差異を説明できるかに移る
根拠を持って処理している会社には、有利な変化です。外注費が前期の3倍になった理由、役員社宅の賃貸料相当額の算定根拠、出張日当の支給基準が規程と議事録で説明できる会社は、選定されても短時間で終わります。逆に「税理士に任せているので分からない」状態が、最も弱い立場になります。
今週やる準備リスト(5項目)
1. 9月の申告・納付スケジュールを停止期間に合わせて前倒しする
7月決算法人は9月18日(金)までに申告送信。9月下旬のダイレクト納付・振替の予定を確認する。
2. 「お問い合わせ番号」(13桁)を社内で共有する
9月24日以降の通知に印字される。税務署への問い合わせ・給与ソフトの納付書設定で使う。旧納付書は令和10年9月頃まで使用可。
3. 処分通知の電子交付を希望するなら9月24日以降に一括同意する
e-Taxのメッセージボックスで通知を受け取る会社は、事前の一括同意手続に切り替わる。
4. 前期比で大きく動いた勘定科目の理由を摘要と稟議に残す
横断照合で目立つのは変動の大きい科目。理由が1行書いてあるだけで、説明責任の8割は果たせる。
5. 出張旅費・役員社宅の規程と議事録を整える
個人的支出との境界が問われやすい2項目。規程・議事録・計算根拠の3点が揃っていれば、調査官の確認は短時間で終わる。
よくある質問
- 9月24日以降、税務調査はすぐに増えますか?
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国税庁は調査件数の増減を公表していません。システム更改の直後は事務処理の移行期間であり、当ファームは調査手法の変化が現れるのは更改後に蓄積されたデータが分析に使われる段階、つまり数か月から1年以上先と見ています。今すぐ必要なのは、9月の申告・納付を停止期間に合わせて前倒しすることです。
- 手元にある旧様式の納付書は使えなくなりますか?
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現行様式(整理番号欄がある複写式)の所得税徴収高計算書・納付書は令和10年9月頃まで使用できる予定です(国税庁公表)。廃棄する必要はありません。新様式では整理番号(8桁)がお問い合わせ番号(13桁)に変わります。
- 顧問税理士に任せていれば、会社側で何もしなくてよいですか?
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申告書の送信と納付手続は税理士側で前倒しの調整が行われるはずですが、処分通知の電子交付の同意、給与ソフトの納付書設定、勘定科目の変動理由の記録は会社側の作業です。特に4と5の準備(理由の記録、規程と議事録)は税理士が代わりにできるものではなく、経営者自身が把握している必要があります。
本記事の日付・期間・様式変更の内容は、2026年8月30日時点の国税庁・e-Taxの公表情報に基づきます。「変わる方向にあること」の節は当ファームの見解であり、国税庁の公式見解ではありません。個別の税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。税務代理・税務相談は当グループの税理士事務所が受嘱します。

