2026年9月、国税庁の次世代システム「KSK2」が本格稼働し、税務行政は本格的なAI・ビッグデータ時代に突入します。これに伴い、従来の「紙の帳簿をめくる税務調査」から、データの照合で先に確認点を絞る「データ先行型調査」(データの照合で先に確認点を絞り、その確認のために調査官が来る進め方。当ファームの造語で、国税庁の用語ではありません)へと、調査の進め方が変わると当ファームは見ています。
この歴史的な転換期において、経営者が知っておくべき極めて重要な事実があります。それは、「税務当局(国税庁)が、AIやデータサイエンスを駆使できるデジタル人材の育成に、かつてない規模で投資を行っている」ということです。
本記事では、日本公認会計士協会東京会が公表した研究報告書(※)の知見も紐解きながら、税務当局のテクノロジーシフトの実態と、企業を守る「次世代の会計専門家」に求められる条件について、Big4出身の専門家視点で解説します。
※参考資料:日本公認会計士協会東京会 テクノロジー委員会 研究報告書「他団体から学ぶテクノロジー能力開発の現在」(2025年6月)
1. 税務当局の本気度:税務大学校における「データ活用研修」の実態
国税庁は、「課税・徴収事務の効率化・高度化(AI・データ分析の活用)」を税務行政DXの大きな柱として掲げています。
これを現場で実行する職員を育成するため、国税庁の教育機関である「税務大学校」では、極めて高度なテクノロジー教育が行われています。例えば、選抜された職員を対象に行われる「データ活用研修」では、以下のようなカリキュラムが組まれています。
- 実機演習が中心: 全336時間の研修のうち、データ処理や機械学習を通じた「実機演習(基礎・応用・実務)」に258時間が割かれています。
- 高度な理論の習得: 統計学や機械学習といった専門理論にも54時間が充てられています。
- 理系人材の積極採用: 国税専門官採用試験に「理工・デジタル系」の試験区分を新設し、データ活用を推進する人材の確保を急いでいます。
これは、税務調査官が単なる税法の知識だけでなく、「プログラミングやAIを用いて、企業のデジタルデータを直接解析するスキル」を身につけて現場に投入されることを意味しています。
2. 迎え撃つ士業(専門家)の現在地
国税庁が「データサイエンティスト集団」へと変貌を遂げつつある中、企業を守る盾となるべき税理士や公認会計士のテクノロジー対応はどうなっているのでしょうか?
前述の研究報告書によれば、各士業団体も会員のICT化支援に尽力しています。
- 税理士業界: 法改正によりICT化が努力義務となり、フォーラムの開催やデジタル化相談室の設置など、組織的な情報提供が進められています。
- 公認会計士業界: 監査基準の改訂に伴い、企業のIT環境理解がより強く求められるようになり、eラーニングや実践的なIT教育カリキュラムの整備が進んでいます。
しかし、各団体とも共通の課題として抱えているのが、「テクノロジー能力の開発が、最終的には会員個人の自助努力(自己研鑽)に依存しがちである」という点です。
テクノロジーに関心の高い専門家とそうでない専門家の間には、すでに大きな「デジタルデバイド(情報格差)」が生じています。AIを活用した高度な税務調査が行われる未来において、テクノロジーに疎い専門家では、企業の正当性を税務署に主張・証明することが極めて困難になります。
3. 企業を守る次世代の会計専門家とは
KSK2以後のデータ分析を前提にした調査に、過去の数字を紙の帳簿で整理するだけの体制では説明が追いつきません。必要なのは、取引の理由と証拠がデータとして残る経理体制です。
当グループでは、Big4監査法人出身の公認会計士・税理士が、監査・内部統制の実務とクラウド会計・データ連携の設計を組み合わせて、証拠が残る経理体制と社内規程の整備を支援しています。
- デジタル証跡の整備: 位置情報の履歴や電子決済履歴など、後から書き換えにくいデータを取引の証拠として残す運用を設計します。
- 内部統制(ガバナンス)の整備: 出張旅費規程や役員社宅など、個人的支出との境界が問われやすい項目について、決議・規程・記録の型を中小企業の規模に合わせて整えます。
- 経理体制の構築: クラウド会計とデータ連携を前提にした経理体制を構築し、経営者が本業の判断に時間を使える状態にします(記帳・起票の代行は行いません)。
税務当局がデータで見るなら、企業側もデータで説明できる形にしておく必要があります。当ファームの「出張旅費規程 デジタル内部統制パッケージ」等は、その最初の一歩として規程・決議・記録の型を提供するものです。税務に関するご相談は、当グループの会計事務所が面談のうえでお受けします。
